コンピューターと認知を理解する

 テリー・ウィノグラードとフェルナンド・フローレンスによる,人工知能とコンピュータ設計に関する書物.基本的なスタンスは工学書であるが,当時の人工知能を批判する起点として,ハイデガー・マトゥラナ・ガダマーなどを引用しているため,難解である.私自身,正確に読みこなせているかは疑わしいと思っている.
 ともかく,当時人工知能研究に幾つもの功績があったウィノグラードが,人工知能研究に反旗を翻したのだから,この書物はスキャンダラスであったのだと思う.インターフェイスの研究に重点が置かれるようになった今日までのコンピュータ科学の歴史の一端が少しだけ理解できたように思えた.日本の第五世代コンピュータシステム構想について言及している項目があり,興味深い.