視線を奪うインターフェイス

提示型ユーザインターフェイス http://hit.hit.dj.kit.ac.jp/~mmina/pdf/CompSoft00.pdf
Memorium http://www.persistent.org/memorium.html
 この二つの研究事例は,家庭などの日常的な空間に,ディスプレイを設置し定常的に情報を表示するインターフェイスの事例である.対象とするユーザに能動的な検索を期待せず,システムが主体的に情報を提示することが特徴である.
 私は,このインターフェイスから,広告やテレビなどにみられる,時間に対する支配的な欲望を感じる.広告やテレビ,それに関わる人々にとって,ユーザの時間を占有することは,死活に関わる重要な問題である.なぜならばユーザの生活時間は,有限であるからである.つけっぱなしのTV.路上の広告.これらは,ユーザの生活時間,視線を投げる時間を奪うことで,存在意義をもつ.
 コンピュータをメディアと観察すれば,この研究事例は,コンピュータとそれに関わる研究者が,ユーザの生活時間を略奪するための研究と考えることができる.情報を視覚表現し,ユーザを魅了する.きわめて野心的な試みである.コンピュータをユーザの生活時間の中に広げてゆくという欲望に自覚的になった時,インターフェイスの研究は,「使いやすさ」というナイーブな幻想から離れて,新しい領域に達するように思われる.